
物流業務の効率化を目指し、多くの企業が自動化技術の導入を進めています。スムーズな物流運営を実現するために、自動化技術について理解を深めたいと考える方も多いでしょう。自社に最適なシステムを選ぶためには、物流自動化の歴史や種類について知ることが欠かせません。本記事では、そのポイントを詳しく解説します。
物流自動化の歴史的背景と発展
現代の物流は、多様な商品を迅速かつ正確に届けるため、効率化と自動化が求められています。物流自動化の理解には、その成り立ちや進化の過程を知ることが重要です。ここでは、物流の基本から歴史的な発展までを簡潔に紹介します。
物流とは
物流とは、生産者から消費者に商品を届けるまでの一連の流れを指し、荷物の保管や商品の包装などの過程も含まれます。物流の段階的な進歩により、現代ではインターネットを通じていつでも気軽に買い物ができるようになりました。消費者の信頼を得るためには、スムーズな物流が不可欠です。近年は倉庫内の業務の一部をロボットやシステムに置き換える自動化が進み、業務効率や生産性の向上が期待されています。
物流の歴史
かつては、物を運ぶ手段は人や家畜が中心でしたが、19世紀になると蒸気船や鉄道、トラックといった機械化された輸送手段の登場により、大量輸送が可能になりました。しかし、大量の積み込みや荷降ろし作業は人手だけでは追いつかなくなり、クレーンやフォークリフトといった機械が積み降ろし作業を担うようになりました。これに伴い、輸送用容器である海上コンテナや荷物を載せるパレットなどの輸送機材も普及しました。物流の機械化が進む一方で、荷物の情報管理は長らく紙媒体が一般的でしたが、ITの進化によって管理業務のシステム化も加速しています。
主要な物流自動化技術とその特徴
主要な物流自動化技術とその特徴について、詳しく紹介します。庫内移動や商品探しの自動化技術
ピッキング作業者のもとに商品が保管棚ごと運ばれてくる仕組みが自動化されています。物流における商品の移動や運搬を効率化するための機器全般は「マテハン機器」と呼ばれます。フォークリフトや台車、コンベア、パレット、自動倉庫など、商品の移動に関わる業務全般で利用される機器です。マテハン機器の自動化により、業務効率や生産性の向上が期待できます。
立体自動倉庫は、保管棚を密に並べ、ピッキング商品を棚ごと取り出す仕組みです。コンピュータ制御により、入庫から保管、出荷までの流れや倉庫内スペースを最大限に活用できます。
AGV(無人搬送車)、AMR(自律移動ロボット)、GTP(グリッドタイプ搬送システム)などの自動搬送ロボットの導入も増えています。
作業者支援システム
作業者支援システムは、検品や仕分け業務を効率化・自動化する技術です。デジタルピッキングシステム(DPS)やデジタルアソートシステム(DAS)などがあります。DPSは、デジタル表示器を使い、ピッキングする商品と数量を作業者に知らせる仕組みです。DASは、ハンディ端末で仕分けリストを読み込み、ランプが点灯したカゴに対応する数だけ商品を投入できるため、仕分け作業の効率化に役立ちます。
情報管理システム
WMS(倉庫管理システム)やTMS(輸送管理システム)などの情報管理システムも実用化されています。WMSは、倉庫内の入庫から出庫、帳票発行までを一元管理し、在庫管理や入出庫作業の効率化を図れます。TMSは、輸送の計画から実行、最適化までを管理し、配車管理や進捗管理、実績管理など、配送状況をリアルタイムで把握できます。
自動化が遅れている分野
宅配業務やピッキング作業は、状況に応じた判断や対応が求められるため、依然として人の手に頼る部分が多いです。しかし、消費者ニーズの多様化やEC需要の高まりにより、自動化の検討や導入が進んでいます。物流自動化の未来と課題
物流業界では、新たな領域での自動化が進められています。ここでは、自動化の進展が期待される領域と、その課題について紹介します。倉庫内作業の自動化
ピッキングやパレタイズ、搬送などを担うロボットの導入により、倉庫内作業の自動化が進んでいる倉庫もあります。AGV(自動搬送車)はコンピュータで制御され、倉庫内の荷物を自動で搬送します。これにより、商品を自動で保管・搬送・ピッキングでき、省人化やコスト削減、人的ミスの低減が期待されます。
輸配送業務の自動化
自動運転車やドローンを活用した輸配送の実験も進行中です。こうした技術の導入は、トラックドライバー不足や高齢化といった課題の解決に寄与すると期待されています。自動化の課題
物流倉庫の自動化は業務効率や生産性の向上に貢献しますが、課題も存在します。自動化機器やシステムの初期導入費用やメンテナンス費用を考慮し、削減できるコストと比較して投資効果の高い機器やシステムを選定することが重要です。また、新しい機械やシステムの使い方や業務フローを従業員に周知し、研修やマニュアル作成を行う必要があります。システムに慣れるまで時間がかかる場合もあり、通常業務と並行して導入を進めるため、業務に支障が出る可能性もあります。