
昨今では物流効率化が重視されており、さまざまな企業で効率化を実現するための取り組みが行われています。今回は物流業者向けの効率化ガイドとして、効率化が求められる背景や効率化によるメリットに加え、物流総合効率化法の概要や対象となる取り組み、具体的な事例についても詳しく解説します。ぜひ参考にしてください。
物流の効率化が求められている背景
近年では、物流において業務の効率化を求める動きが高まっています。背景には物流業界が抱えるさまざまな課題があり、効率化を実現すれば数多くの課題を解決することが可能です。ここでは、物流の効率化が求められる背景について詳しく解説します。ドライバーの人手不足が深刻化しているため
国土交通省の調査によると、トラック運送業で働く従業員の45%以上が40〜54歳であることが分かっています。トラックドライバーの平均年齢は年々上昇傾向にあり、29歳以下の若手ドライバーの割合は10%以下であるのが現状です。若年層の従業員の割合は他の業種と比較しても極めて低く、数年後・数十年後にはさらに人手不足が深刻化していることが予想されます。また、全日本トラック協会の調査によると、運送業界で人手不足を感じている企業の割合は62%以上にものぼります。トラックドライバーの人手不足の原因として考えられるのは、過酷な労働環境です。
トラックドライバーの労働時間は全業種の平均よりも2割ほど長いことが分かっており、とくに長距離ドライバーは移動時間・労働時間ともに長いことから激務になりやすいです。人手不足の解消には、労働環境の改善が対策のひとつとして求められるでしょう。
インターネット販売の拡大による配送量が増加しているため
近年ではインターネット販売が急速に拡大しており、感染症の流行を受けてインターネットでの買い物が日常となった人も少なくありません。とくにドライバーの負担が大きい個人宅向けの小口配送が増加していることからも、物流現場の業務量が増えて長時間労働につながっています。また、個人宅向けの配送ではスピーディーさが重視される傾向にあり、トラックの積載量が減少しているのも問題のひとつです。国土交通省の調査によれば、2010年以降の貨物自動車の積載率は40%を下回ったままで推移していることが分かっています。
積載率が少ないと荷物を積む・届けるという作業を複数回に分けて行う必要があるため、同じ荷物の量でも業務効率が低下し、時間的コスト・人的コストが余分にかかります。積載率を改善するためには、インターネット販売を含む物流システムの根本的なプロセス改善が不可欠です。
再配達などでドライバーの業務負担が大きくなっているため
最近では、各宅配業者においてインターネット上で荷物を管理できるサービスが導入されており、受取日時の選択や再配達の申込みなどが可能です。しかし、日時指定サービスを活用していない顧客に対しては不在であれば何度も再配達しなければならないほか、日時を指定したにもかかわらず不在にしている顧客もいます。
再配達はドライバーの業務負担が大きくなる原因のひとつであり、配送コストが余分にかかる点もデメリットです。今後は日時指定できる商品を増やす・宅配ボックスを積極的に利用するなどの対策を取り入れることで、再配達の割合を減らすことが求められます。
物流効率化に取り組むメリット
物流を効率化させることにはさまざまなメリットがあります。具体的なメリットは、以下の通りです。コストカットにつながる
荷物の運搬には、ドライバーの人件費やトラックのガソリン代、倉庫の管理費用などのさまざまなコストがかかっています。物流の効率化によって運搬業務がスムーズになれば、その分コストを削減することが可能です。質の高いサービスを提供できる
物流効率化のために在庫の管理システムなどを導入すれば、倉庫管理業務の最適化によってサービスの品質向上が叶います。手入力や目視でのチェックからシステムによる作業へと変わることから、ヒューマンエラーが最小限に抑えられるでしょう。ドライバーの業務負担を軽減できる
物流効率化が進めば再配達などの余計な手間・業務がなくなるため、ドライバーの業務負担が軽減されて作業時間を短縮することが可能です。人件費のカットにつながるのはもちろん、ドライバーの労働環境改善が進めば人手不足の解消も期待できることでしょう。「物流総合効率化法」について紹介
物流総合効率化法は、物流の効率化を目指して施行された法律です。ここでは、物流総合効率化法の概要や改正による変更点、認定基準やメリットについても詳しく解説します。物流総合効率化法の概要
物流総合効率化法の正式名称は流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律であり、物流に携わる企業の業務効率化をサポートすることを目的として2005年に施行されました。物流総合効率化法では業界全体の効率化・発展を促すため、対象となる取り組みを行った企業に対して経費の補助や税制優遇などを通した支援を提供します。
当法律の対象となるのは、配送・保管など一体的実施に関する取り組み、輸送網の集約やモーダルシフトのように輸送の合理化につながる取り組み、環境への負荷の低減または省力化が叶う取り組み、特定流通業務施設の整備に関する取り組みの4つです。
法改正による変更点
物流総合効率化法は2005年の施行後、3回の法改正を経ています。直近の法改正は2024年であり、物流DX・GX向けのサポートの拡大や特定事業者への規定強化に加え、物流企業社や荷主への努力義務の導入も実施されました。具体的には、特定事業者は中長期計画を作成したうえで定期的な報告を実施しなければらず、物流総合効総括管理者を配置する義務も課されています。
また、物流事業者に対しては輸送網の集約・ドライバーの業務負担軽減・配送共同化などの努力義務が、荷主に対しては物流事業者との連携・契約条件の見直しなどの努力義務が追加されました。
さらに、2024年の改正では計画書を提出しなかった場合の罰則が追加されたため、計画書がなければ最大50万円の罰則金を支払わなければなりません。加えて、効率化達成に向けた取り組みが足りず、勧告・命令を受けてもなお改善が見られない場合には、最大100万円の罰金が科されます。
具体的な認定基準とメリット
物流総合効率化法で支援対象として認定されるための具体的な基準は、基本方針に照らして適切な取り組みであること・流通業務総合効率化事業を確実に遂行できること・各事業法の欠格事由に当てはまらず許可基準に該当していること・特定流通業務施設の整備において省令の基準に該当していることの4つです。認定を受けることで補助金の支援や法人税・固定資産税の減税、無利子融資などのさまざまなメリットを受けられます。また、自社の業務の効率化・総合化が叶うのはもちろん、環境に配慮できるのもうれしいポイントです。